問題児Chad

おそらく1年生の時だったと思うが、同じクラスにChadという問題児がいた。
先生にはとにかく反抗的。毎日のように問題を起こしていた。
全く素直ではない、ガキ大将的存在だった。
でもジャイアンにとってのスネ夫のような存在もいなかった。
要は一匹狼だったのだ。
このChadが僕に一目置く出来事があった。
当時、僕は宇宙戦艦ヤマトや新幹線の絵を描くのが好きだった。
それも遠近法を効かせた、迫力のある視点の絵をよく描いていた。
お気に入りのヤマトの絵を何度も模写していたのだ。
ある日、その絵を学校で描いた。
そしたら、Chadがこれはお前が描いたのかと大騒ぎして、
とんでもなく凄い奴がいるという目で見るようになったのだ。
さらに別のある日、算数の掛け算だったか、大きい桁数の足し算だったかを
計算して見せたことがあり、これにもChadの度肝を抜いたことがあった。
アメリカの算数は日本に比べると遅れていた上に、我が家では父に時々算数を
教えてもらうことがあって、かなり先の算数を勉強していた。
だからそんなことは朝飯前だったのだが、Chadには衝撃だったようだ。
僕の書いた紙を先生に見せて本当に合っているのかと確かめ、
先生に合っていると言われると、Chadは一目も二目も置くようになった。
クラス随一の問題児だったが、今にして思えば才能に対しては真摯で素直でかわいい奴だった。
アメリカ人は才能に対しては率直に一目置く風潮があるように思う